自然栽培ではマルチなどのビニール資材を使ってもいいの?
そんな質問を頂きましたので、今回はビニール資材について解説します。
この記事の内容
- 農業で使うビニール資材
- マルチの利用目的
- 自然栽培ではビニール資材を活用する
- ビニール資材の利用について
私は就農当初から5年ほど、木村式自然栽培の勉強会に参加して、自身の畑で実践しながら自然栽培を学びました。
そこで得た知識とこれまでの経験を基に、自然栽培におけるビニール資材の利用について解説します。
農業で使うビニール資材
農業で使うビニール資材の代表的なモノを以下に挙げてみます。
- ビニールマルチ(作物の株元に利用)
- 雨よけビニール(屋根に利用)
- トンネルビニール(作物の保温等に利用)
他にも細々としたモノはありますが、よく使うビニール資材はこの3つです。
ビニールマルチについては、次の項で詳しく解説します。
雨よけビニールとは、上の写真のようにトマトなどの屋根部分に利用し、作物と畝を雨から守る役割です。
トンネルビニールは、作物をビニールで作ったトンネルの中で栽培することにより、寒い時期に作物を保温したり、雨に作物がたたかれるのを防ぐ役割があります。下の写真は防虫ネットですが、このネットがビニールになったイメージでお考えください。
マルチの利用目的
写真の黒いモノがビニールマルチと呼ばれる農業資材です。
これはとても優れた資材で、以下のような機能があります。
ビニールマルチの役割
- 雑草を抑える
- 土を保温する
- 土の湿度を保つ
- 土が雨に叩かれるのを防ぐ
このようにマルチな役割を持つとても便利な資材です 🙂
雑草を抑える効果については、使わずに栽培をしてみると分かりますが、作物の株元に雑草が生い茂ると、作物を傷つけないように除草するのは大変な労力が必要になります。その点、ビニールマルチを使えば作物の周辺には草が生えませんので、他の部分を草刈り機で簡単に除草できます。
土の保温と保湿も作物の生長には欠かせません。時々苗が余って、それをマルチの横に植えておくことがあるのですが、その生長具合の違いは歴然です。マルチを使っていない方は生長が遅く、しかもひょろっとしていて収穫量も少なめになります。
また土が雨に叩かれると、跳ねた泥が作物にかかって病気を誘発したり、土が固まって根が酸欠状態になったりしますので、これを防いでくれるマルチはとても重宝します。
自然栽培ではビニール資材を活用する
肥料も農薬も一切使わない自然栽培では、ビニール資材はとても有効な資材です。
なぜなら肥料による生長の促進が出来ない以上、少しでも作物の生長に快適な環境を準備する必要があります。それが土の保温と保湿です。土が暖かく、適度に水分が保たれていれば、作物は元気に生長してくれます。
更に、農薬も使わないため、作物を健康で元気に育てなければ、病気や虫に負けてしまうリスクがあります。
また、自然栽培は根の生長を何よりも重要視しますので、雨で土が叩かれて根が酸欠状態になってしまうと、作物の生長に大きな影響が出てしまいます。
それらの問題を避けるためにも、自然栽培では積極的にビニール資材を使います。
ビニール資材の利用について
ビニール資材を使わずに農業を行っている方が居るのは知っています。特に自然農法の方に多いように思います。
そんな方の話を聞くと、主な理由は次のとおりです。
- ビニールのゴミを出したくない
- 作物の株元も雑草を生やしたい
- 石油由来の製品を利用したくない
「ビニールのゴミを出したくない」点については全くそのとおりです。何度か再利用したとしても、いずれはビニールゴミとして廃棄しなければなりません。これは事業用廃棄物ですので廃棄コストもかかります。このなるべくゴミを出したくないのと、作物を元気に育てる目的とのトレードオフになります。
これはそれぞれの農業者の考え方によると思いますが、私はやはり自然栽培というとても安全でおいしい野菜を、少しでも多くの方に食べてもらうために、作物を元気で健康に育てることを優先して、ビニール資材を利用しています。
次に「作物の株元も雑草を生やしたい」という点についてですが、微生物の活性化と土を肥やすという点では、これも理解できます。ビニールマルチによって土の温度が高くなるので微生物の活性化は期待できますが、雑草が生えないため、雑草の根などに寄ってくる微生物の増殖は期待できません。この点につてはあくまで経験上ですが、マルチありと、マルチなしの栽培を比較したときに、明らかにマルチありの方が作物が元気に生長してくれるため、私はビニールマルチを活用しています。
最後の「石油由来の製品を利用したくない」というのも、自然を愛する人からよく出る話です。私もこよなく自然を愛している者の一人ですが、ガソリン燃料を使った軽トラックやトラクターにも乗りますし、電車やバスにも乗ります。またコンビニに行ってビニールでパッケージングされた商品も買います。山奥に暮らして自給自足的な生活をしている人ならともかく、私のような一般的な社会生活を送っている人間が、農業資材だけ石油由来のモノを使わないと言っても矛盾しますし、説得力もありません。
再利用などを積極的に行ってゴミを減らす努力と共に、適切な廃棄物処理を行いながら、品質の良い農産物の生産のために、今後もビニール資材を活用するつもりです。
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