「自然栽培」と「自然農法」の違いはなんだろう?
肥料や農薬を使わない点が似てるけど、具体的にどんな違いがあるのかな?
以前書いた記事「自然栽培とは」の中で、自然栽培と有機栽培、慣行栽培との違いについて書いたところ、このようなご質問がありましたので解説します。
この記事の内容
- 自然栽培と自然農法の比較
- 除草について
- 耕起について
- マルチングについて
- 自然栽培は自然農法をヒントに作られた
- 最後に
自然農法の実践経験はありませんが、新規就農時に自分の農法を模索する中で、何件かの自然農法農家を見学したり、実践者から直接話を聞いた経験をベースにお話しします。
今回はちょっとだけ専門的なお話もしますね(^_^;
自然栽培と自然農法の比較
まずはざっくりと、下の表で違いを見ていきます。
農法 | 自然栽培 | 自然農法 |
肥料の使用 | なし | なし |
農薬の使用 | なし | なし |
除草(草取り) | する | 原則しない |
耕起(畑を耕す) | する | しない |
ビニールマルチ | 使う | 使わない |
上記はあくまで原則的にとご理解下さい。緊急時や思想の違いにより異なる場合もあります。
除草について
畑に生える雑草は、どちらの農法にとっても大切なモノなので、むやみに抜いてしまうことはありません。
ポイント
草は畑に日陰を作り、水分を蓄え、雨粒から土を守るなど、たくさんの効果があります。
ただし、
「自然栽培」では、野菜の際に生えて野菜の生育に影響がある草は取り除きますが、
「自然農法」では、根が土を耕してくれることを重視するので原則抜かずに栽培します。
耕起について
ポイント
土は耕すことによってフカフカになり、植物の根が張りやすくなります。
また土中に空気が入るため、土の中にいる好気性菌の活動が活発になり、野菜の生育に好影響があります。
「自然栽培」では根の発育をとても重視するため畑を耕しますが、
「自然農法」では雑草の根が土を耕してくれるから機械で耕す必要はない、と考えます。
マルチングについて
ポイント
写真の黒い資材はビニールマルチ(マルチ)と言い、このように土に固定して作物の根元を覆うことをマルチングと呼びます。
マルチングには、保温、保湿、草の抑制などの効果があり、作物の生長を促進する効果があります。
そのため、肥料や農薬に頼らない「自然栽培」ではマルチを利用して作物の生長を促しますが、
「自然農法」では思想的に石油由来のビニール資材は避ける傾向にあります。そのため、どうしても作物の根元を覆いたい場合は、刈った草やワラなどを利用した植物マルチが行われます。
自然栽培は自然農法をヒントに作られた
自然栽培を世に知らしめたのは、「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さん(写真左)ですが、木村氏の著書の中で、自然農法の福岡正信さんの本に影響を受けたと述べられています。
木村さんは、福岡さんの自然農法を改良して、肥料も農薬も使わない農法を栽培と呼べる水準に引き上げたと言えます。
実際に私も、自然農法の農場を見学した際に、自然農法で育てた白菜を見たのですが、その小ささに驚いた記憶があります。スーパーで売られているサイズの半分以下でしたので、これで農業として成り立つのだろうか?と疑問に思った記憶があります。
その後に「自然栽培」と出会った私は、「これなら行ける!」と確信して、以来今年で10年目になりました。
最後に
「自然農法」で作られた野菜の味や、思想はとても素晴らしく尊敬しています。ただし、肥料や農薬を使わずに育てた安全でおいしい野菜を少しでも多くの方に食べていただきたいと考え、私は「自然栽培」の道を選択しました。
どちらが良いとか優れているとかではなく、それぞれの農家が目指しているゴールの違いによるものだと考えています。
農法は違っていても、地球環境を守りながら、おいしくて安全な野菜を作りたいと願う根本は同じです。
皆さまも畑に出向いて、農家からそれぞれの思いを聞かれてみてはいかがでしょうか?